社員が言うことを聞かない、という中小企業の社長が抱えがちな問題を、具体的な事例を上げて原因を分析し、わかりやすくご説明しております。
以下は、レポート冒頭からの抜粋です。


松本卓也（35歳）は、京都で祖父の代から続く漆器メーカーの3代目社長。
祖父が一人で起こした会社が少しずつ大きくなり、現在は社員15名となった。

松本には２つの悩みがあった。
前社長の父から引き継いで社長となってから２年。父の代から努めている役員達が、父のことは尊敬していたのに自分のことは軽んじていて、なかなか言うことを聞いてくれないのだ。

彼らが社長である自分に反抗しているので、若手社員達もその影響を受け、表面的には指示に従ってくれるけれども信頼されていないことを感じている。どうしたらいいものか…。

もう１つの悩みは伸び悩む売上である。

祖父・父の代ともに、伝統的な変わらぬやり方でやってきたが、今の時代に頑固一徹な職人仕事を続けているだけでは、会社の発展は望めない。

実際に、会社の売り上げは父が社長であった10年ほど前からずっと伸び悩んでいる。

そこで、松本は事業内容を見直し、思い切った改革をすることが必要だと感じている。

それには社員15名が一丸となって取り組むことが不可欠である。

会社が新たなスタートを切るためにも、是が非でも役員・職人・若手社員との信頼関係を構築したいと願っているのだった。

ところが、社内に自分を信頼してくれる社員は一部しかいない。
チームワークが良いと言えない状態をどのように変えていけば良いのか、自分では見当がつかない。

祖父も父も威厳がありずっとワンマン経営を続けていて、怒ると怖かった。それに対し、松本は独裁者のように社員を恐怖で縛りつける方針には以前から反発しており、かといって言葉で言うだけでは社員が言うことを聞いてくれないので、途方に暮れていた。

毎日会社で頭を悩ませて疲れた状態で帰宅すると、家では育ちざかりの７歳の息子が暴れていて、妻が手を焼いている。一家の大黒柱である父親として息子をしかるが、その場だけ言うことを聞いてもまた翌日も懲りずに暴れまわる始末。社員も息子も自分の言うことを聞いてくれず、つくづく嫌になってしまう。

社員研修の専門家に２度ほどお願いするも、効果があるのは１週間程度ですぐに元に戻ってしまう。


皆、私は父の跡取り息子だから社長に成れたと思っている。その通りだ。社長就任と実力の有無は関係ない。
周囲は売上を上げてようやく実力を認めてくれるのだろう。

しかし、実際は会社を維持するだけで精一杯。しかも、社員は私の言うことをあまり聞いてくれない。

どうすれば、今の状態から脱することができる？
なんと言えば、私の言うことを聞いてくれるのだろう？
何か、根本的なところに問題があるのだろうか？

私はどう変われば、いいのだろう…
今のままだと、遅かれ早かれ、わが社は終わってしまう…

３代目としてそれだけは避けなければ。

そんな焦りだけが募る日々。

３代目として当然のように会社を継いだはいいが、社員が言うことを聞いてくれない。


会社でも自宅でも常に社員との関係について思いめぐらせているが、一人で考えていても一向に答えが出ない長いトンネルを歩いている気分になるのだった。

そんな中、仲のいい食品店を運営している社長から、変わった手法で組織マネジメントを行うブランドコンサルタントがいるという話を聞いたのだった。

詳しい話を聞けば、中小企業の抱える問題の根本的な改善を行うことについて精通した専門家だという。

何か自分の現状を打破できるきっかけになるかもしれないと感じ、依頼することにした。
……